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複雑な直系親族以外からの相続 行政書士への委託で手間や不安を軽減

2022/9/27

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このページでは、須田さんの相続手続きを担当した行政書士が、今回の相続を振り返って解説します。

<この事例の概要>
ある日、須田 明人(仮名)さんは病院から「あなたの叔父さんが入院しており、余命わずかです」と連絡を受けました。慌てて駆けつけるも、ほどなくして叔父は逝去。叔父には子がいなかったので、甥である須田さんと4人の姪が自宅などを相続することになりました。葬儀などを終え、叔父の自宅を売却しようとすると、違法建築で売却が難しいかもしれないと判明。幸いにも難物件の取り扱いが得意な不動産会社を介して無事に売却でき、売却金と預貯金を相続人の間で等分に分け相続が完了しました。

解説者プロフィール

解説者プロフィール

ところざわ相続専門学院代表(行政書士)

磯村 修世

1952年愛知県生まれ、名古屋市内の不動産会社に勤務後、(株)オリエントコーポレーションへ転職、不動産貸付業務及び不動産業務全般に従事。2011年相続専門の行政書士として独立。2012年行政書士・司法書士・税理士・弁護士等の専門家集団「所沢くらしとビジネスを支援する会」の代表就任。他に「ところざわ相続専門学院」主宰。

まずは相続財産の全容を把握することからスタート

行政書士という仕事は、人からお客様を紹介されることがよくあります。須田様は懇意にしている葬儀会社から、「相続が大変そうな方がいるから、話を聞いてあげて」と紹介された方でした。

須田様の亡くなった叔父様は、奥様もお子様もいない方。ご両親・ご兄弟もすでに逝去されており 代襲相続 人は甥(須田様)と姪だけで、「年に一度程度しか会っていなくて突然亡くなったため、 遺言 があるのかも遺産として何があるのかもわからない。どう調べたら良いのか」とお困りの様子でした。

そこで須田様に「家にカレンダーがあれば、取引がある銀行のものかもしれない。そうしたものをヒントに、通帳など重要そうなものを探してみてはどうか」と伝えました。

見知らぬ法定相続人が発覚。遺産は等分することに

須田様に叔父様の家の中を探してもらったところ、叔父様は銀行2行、証券会社3行の口座をお持ちだったことが判明。これで自宅を含めてすべての相続財産を把握できたので、次に 法定相続人 の確認に取り掛かりました。当初、須田様を含め4人と聞いていましたが、よく調べてみると遠方にもう1人の従姉妹がいることがわかったのです。

叔父様には幼い頃に養子に出された弟さんがいらっしゃり、その娘さんがご存命でした。彼女は須田様にとって従姉妹にあたります。須田様たちはこの方の存在をご存じなく、お知らせすると大変驚いておられました。

この新たに見つかったもう1人の従姉妹様に「あなたは亡くなった叔父様の法定相続人であり、法定相続分をもらう権利がある」ことをお伝えするお手紙を出すと、「風の便りで私には従姉妹たちがいるらしいと聞いていましたが、今回初めてきちんと皆様の存在を知りました。熟慮した結果、相続させてもらえればと思いますが、皆様の意向はいかがでしょうか」と大変丁寧な返事が返ってきました。

須田様たち4人はこれを受け、「ぜひ相続してもらいたい」となったようです。また 法定相続分 は均等ではなかったのですが、皆さんで話し合っていただいた結果、「5人で均等に分ける」ことに決まりました。

時間と手間がかかる証券会社の手続き

証券会社の口座に関する手続きには、ずいぶん時間がかかりました。証券会社の口座は銀行の口座と異なり、いきなりの解約ができず、誰かが同じ証券会社の口座を作成し、移管して証券を売却という手続きが必要になるからです。

また、こうした手続きには印鑑が必要ですが、当時の須田様は単身赴任中で長野県在住。印鑑が必要になるたび、休日などを利用して私の事務所がある埼玉県まで押印するためだけに来てくださってました。

須田様に証券会社それぞれの口座を作成いただき、そこに叔父様の財産を移管。その後、須田様の名義で売却し、須田様を含めた相続人全員が均等になるように、皆様の口座にお振り込みさせていただきました。

お墓に関する費用も、相続の時点で考慮する

次に決めたのは墓守です。これは須田様が引き受けることになりましたので、私は「墓守費用を相続財産から算出して須田様に預ける」旨を 遺産分割協議書 に記載するため、従姉妹の方々から合意を得ました。お墓がある場所と須田様の住居は離れているため、将来的には墓じまいして永代供養するそうですが、その費用も墓守費用から賄う予定です。

お墓は守るのもしまうのもお金がかかりますから、この時点で費用の件をはっきりしておくことは大変お勧めです。なお、これらの内容は遺産分割協議書に記載しています。

相続不動産を相続人全員の共有名義にして責任分散

そして最後が叔父様のご自宅についてです。登記情報を見た時点で「売るのが難しそう」と思っていたため、相続人全員の共有名義で相続することをお勧めしました。これは責任を分散するためです。

例えば、屋根の瓦が落ちて歩行者などが怪我した場合、持ち主の責任が問われます。今回のように簡単には売れないであろう物件の場合は、何か起きたときにはみんなで責任を負い維持管理していくことが、最終的に平和な解決に繋がると考えました。

そんな私の提案に理解を示し「できれば売却したい」と話されていたので、難しい物件を得意とする不動産会社を紹介しました。その後、須田様が窓口になってやり取りし、無事に売却できたと聞いています。

相続人同士の仲が良かったからスムーズに終えられた

須田様は5人の法定相続人の中で、もっとも叔父様と親交が深かったそうです。だからこそ相続に関する手続きを完遂することが自分の使命だとお考えのようでした。しかしながら須田様ご自身は単身赴任で長野県におり、週に一度しか埼玉県の自宅に戻れない生活でした。そうした思うように事を進めづらい状況を、私はお手伝いしただけに過ぎませんが、須田様のご使命を無事果たすことができ大変嬉しく思っています。

今回のような直系親族以外への相続は、相続人が増えることで複雑になりがちです。また、被相続人と疎遠で、相続手続きが思うように進まないケースも珍しくありません。それでも須田様たちがスムーズに叔父様からの相続を終えられたのは、相続人同士の関係が良好だったからでしょう。相続には日頃の交流が大きな影響を与えると、あらためて実感した案件でした。


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