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「戸籍謄本」を調べると見知らぬ相続人がもう一人いた!紳士的な人柄に助けられ円満相続

2023/4/28

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

遠藤 里美(仮名)

東京都在住。45歳。
母が亡くなり相続手続きを始めると、両親からも聞かされていない異父兄の存在が判明。大きな不安を抱くも、異父兄の穏やかで温かい人柄もあり、相続手続きは円満に解決

戸籍謄本の収集でわかった驚愕の事実!はじめて知った異父兄の存在

母が亡くなったのは、一昨年のこと。父は5年前に亡くなっていましたので、相続人は、私と弟の2人のはずでした。私も弟も仕事が忙しいので、相続手続き全般は、司法書士に依頼しました。

しばらくして、司法書士から、「お母様の戸籍謄本を収集してわかったのですが、相続人は、実はもう1人いらっしゃるようです。お父様が違うお兄様のことはご存じないでしょうか?」と連絡がありました。異父兄の存在など、両親からも聞いたことがありません。私は動揺し、すぐに弟に連絡しました。弟も全く知らなかったそうで、驚愕していました。

母の遺品にも残っていた異父兄への想い

「戸籍の附票で新たに判明したお兄様の住所は確認できますので、話し合いに応じていただけるよう、お手紙をお出しすることが可能です」と司法書士に言われ、「お願いします」と答えたものの、私の心の中には「異父兄はどんな人なんだろう?揉めると嫌だな」という不安が大きな影を落としていました。

母の遺品のノートの中に「M銀行の通帳の500万円は異父兄に遺してあげたい」という走り書きを見つけたのは、その直後のことでした。母の想いを見つけた私は、弟にそのことを話しました。

不安から一転、異父兄との面談で、円満な相続が実現

数日後、司法書士から連絡がありました。「お兄様からお電話をいただきました。すごく紳士的な方でしたよ。『遺産は要りません』とおっしゃっていましたが、『この機会に妹や弟と是非会いたい』ともおっしゃっています。電話番号を伺いましたので、直接ご連絡されてみてください」

私は、ドキドキしながら、茨城県に住んでいるという異父兄の携帯電話に電話しました。第一声の印象は温かみのある声で、私は心底安堵しました。

茨城県出身の母は地元で一度嫁いだものの、姑とうまくいかず、まだ赤ん坊の異父兄を残し、追われるように婚家を出たそうです。その後、東京に出て父と再婚し、私たちが生まれたのでした。母はそのことを一度も口にしませんでした。異父兄も数年前にお父様が亡くなる間際に話を聞かされて、はじめて知ったとのことでした。

その週末、東京のホテルのラウンジで異父兄と私と弟の3人は、顔を合わせました。「遺産は本当に要りませんから。僕はこうして妹や弟と会えたことがうれしい」と穏やかに語る異父兄。私は母のノートの走り書きを見せ、半ば強引にM銀行の通帳に残る約500万円( 遺留分 にも満たない金額でしたが)を異父兄に相続してもらいました。

最初はどうなることかと思いましたが、亡くなった母にとっても私たち姉弟にとっても非常に円満な相続となりました。その後も、母の一周忌の法要に来てくださるなど、異父兄との親交は続いています。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

相続手続きにおける最初のステップは、相続人の確定です。具体的には、被相続人の戸籍謄本を取得し、これを客観的な根拠として、相続人を確定させることになります。手順としては、まず被相続人の死亡時の本籍地の役所で戸籍謄本を取得。本籍地が変更された経緯がある場合は、変更前の本籍地の役所で取得・・・というように、死亡時から出生時まで遡り、連続した一生分の戸籍を集めていきます。

この過程で、予期せぬ相続人が現れることがあります。実際、本事例のようなケースは、想像されるよりも多いのが実状です。そのような状況となり不安、お悩みの場合は、司法書士への相談が最適解だと思います。戸籍の附票から、現在の住民票上の住所を特定し、適切なお手紙を出すことで、話し合いの実現に向けたサポートをおこなっている専門家です。

なお、本事例では円満な相続が実現されましたが、同様のケースで、話し合いがうまく進まず、揉めてしまった事例も少なからずあります。このようなトラブルを防ぐためにも、被相続人に前の配偶者との間に子供がいることが事前にわかっている場合は、生前に遺言書を作成しておいてもらうことをおすすめします。

解説者プロフィール

廣木 涼

司法書士事務所アベリア

司法書士

廣木 涼

大手司法書士法人で約5年の勤務、相続事業部のマネージャーを務め、独立。 不動産会社や保険会社など様々な業種と連携しながら、士業の枠に捉われず、多角的な視点から、遺言・家族信託等、生前の相続対策に関する総合的なコンサルティングサービスを提供しています。


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