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相続対策から始まった「養子縁組」の話!妻を父の相続人にできたことで節税に

2023/12/22

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

伊藤 隆(仮名)

千葉県在住。48歳。
父親がまだ元気なうちに相続税対策を考えていたが、法律には疎いため何から手を付けていいか分からず。専門家に相談してみると「養子縁組」によって相続税が節税できると知る。

現金の貯えが少ない!相続税の支払いが不安

一緒に住んでいる私の父は今年で79歳。足腰もしっかりしていて、物忘れなんてすることもなく、まだまだ元気ではあるものの、80歳近くになればどうしても「もしものとき」が頭をよぎってしまいます。父とは親子関係も良く、父の死を想像するだけで苦しくなってしまいますが、それによっておこる現実的な不安が一つありました。それは相続のことです。

父は日頃から資産はほとんどないと言っていましたが、自宅と近隣に何部屋かマンションを保有していて、 相続税 が発生するかも?と不安を感じていたのでした。

ただでさえ、妻である香奈との間に生まれた2人の息子を育てるための家計が心配なのに、さらに相続税を納めなければならない可能性がある…考えただけでも胃が痛くなる思いです。何か良い対策は無いか自力で調べてみるも、法律に疎い私にはよくわかりません。このまま悩んでいても仕方がないので、相続コンサルタントに相談してみることにしました。

すると、家族間の仲が良いのであれば、父と私の妻が「養子縁組」をするという方法もあることを教えてもらいました。養子縁組によって相続人が増えれば相続税の 基礎控除 が増えるため、結果的に節税になるとのこと。

家族間の関係性が良かったからできた相続税対策

父の相続人は私と兄の2人。さっそく私は、専門家から聞いた方策を父と兄、そして妻に話しました。

父は「節税はともかく、香奈には日頃から世話になってる。財産をしっかり残してあげたい」との意向もあり賛成してくれました。

兄は自らの 法定相続分 が減るにも関わらず、「父が今も元気なのは香奈ちゃんのおかげだから」と承諾してくれました。一番気がかりだった妻は、「お義父さんと養子縁組で本当の親子になれるのは嬉しい」と承諾してくれました。

その後、養子縁組は順調に進み、父と香奈は法律上の親子となりました。養子縁組の手続きはそれほど難しくなく、素人の私でも簡単に進めることができました。

ほっとしたのも束の間、手続きが終わった途端、父は急に体調を崩し、そのまま逝ってしまいました。脳梗塞でした。

養子縁組をしたことで結果的に節税に

ショックから立ち直る間もなく、葬儀などで慌ただしい中で、相続税の申告には10カ月という期限があることを知り、少しずつ準備を始めることにしました。

計算をしてみると、本来数百万円近かった相続税が数十万円で済むことを知りました。相続税対策としておこなった養子縁組が節税へと繋がり、心底助かったという思いがこみ上げてきました。

その後、兄と妻とは相続分について揉めることはなく、無事にすべての相続手続きを終えることができました。理解を示してくれた父、そして仲の良い家族であったことに本当に感謝しています。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

相続における養子縁組でもっとも大切なのは当事者同士の気持ちです。相続人が増えるということは、もともと相続人だった方の取り分が減る恐れがあります。養子縁組がきっかけとなって相続人同士の溝が深まるという事態もありえます。ですから、 被相続人推定相続人 それぞれの関係性や想いが大切になります。

本事例では、家族同士の仲が非常に良かったことから、相続トラブルに発展することはありませんでした。また、本事例では養子縁組をしたことで相続税の節税が実現しています。

相続税には、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という基礎控除があります。遺産総額の合計が基礎控除を上回ることがなければ、相続税がかかる心配はありません。

本事例は、本来2人だった相続人が養子縁組によって1人増えたため、4,200万円の基礎控除が4,800万円に引き上げられました。遺産総額が若干オーバーしてしまったため相続税は生じてしまいましたが、数百万円の負担を数十万円に抑えられました。

本事例を一見すると、養子縁組によっていくらでも相続税の基礎控除を増やせるようにも捉えられます。しかし、税法上、認められる養子の人数には制限があります。養親側にすでに実子がいる場合、養子は1人までしか 法定相続人 に含められません。

解説者プロフィール

山口 進

株式会社北斗ハウジング

山口 進

相続に関するコンサルティング会社を経て、現職では相続のみに関わらず、空き家問題の解決を包括的におこなう事業に従事。相続に関する相談に対し100件以上対応しており、相続が関連してくることが多い空き家問題の解決に向けて、様々なお悩みを抱えるお客様と一緒になって解決できるよう、業務に取り組んでいます。


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