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未成年者は遺産分割協議に参加できない?「特別代理人」の選任で手続きを無事に終える

2024/3/15

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この相続事例の体験者

この相続事例の体験者

村田 恵子(仮名)

千葉県在住。50歳。
夫の相続人に未成年者がいたため、遺産分割協議ができず困惑することに。司法書士からのアドバイスで「特別代理人」を選任させれば手続きが進められることを知る。

息子が未成年であるため遺産分割協議ができず戸惑う

私は数年前から体調がすぐれず、悪いときは入院するほどでした。そんな中、夫に先立たれてしまいました。子どもの1人がまだ未成年であり、私だけで育てられるのか不安でいっぱいだったのですが、救いとして遺産がかなりあったので、養育費などの心配はありませんでした。

夫の相続人は、私と大学生の長男、中学生の次男の計3人でした。子どもたちは私の体調と今後の生活を心配してくれ、「遺産はすべてお母さんに相続してほしい」と言ってくれました。

葬儀が終わり、今後の生活のために早速預貯金を引き出そうと銀行へ行くと、全額引き出すには 遺産分割協議書 が必要になるとのことでした。そもそも 遺産分割協議 のおこない方も知らなかったため、インターネットで調べてみると、未成年者は遺産分割協議をおこなえないとあるではないですか。次男の達也は中学生で未成年です。

それなら、親である私が代理でおこなえばと思いましたが、私自身も相続人であるため利益相反に該当する恐れがあり、それもできないとのこと。私はどうすればよいのか困惑してしまいました。

利益相反ってなに?親としての葛藤で不安はピークに

そもそも私には利益相反に該当するという意味がわかりませんでした。私自身も相続人であるから、達也の代理で遺産分割協議に参加すると、達也の利益を害する恐れがある?まるで私が息子の利益を奪うのではと疑われているような気持ちになります。

達也はまだ15歳で、いきなり大金を手にしても管理できるか不安ですし、高校は寮に入ってしまうため私の目が行き届かないことも不安です。将来的には本人が大学受験を希望していることもあり、お金は私がしっかり管理していきたい…。子供の権利が尊重されていることは理解しつつも、親としての想いを阻む法律の厳しさに、大きなストレスを抱えてしまいました。

特別代理人の選任により遺産分割協議が可能に!

私はどうしていいのかわからず、夫が懇意にしていた司法書士に相談しました。司法書士によると、未成年者がいる場合は、裁判所から特別代理人を選任してもらい、代理で遺産分割協議に参加してもらえば解決するとのことでした。

特別代理人には、事情を把握してくれている司法書士にお願いしました。裁判所からは遺産分割協議の内容に関して「照会書」という書面が相続人である私と子供にも届き、「私がすべての財産を相続する必要性」や「相続人全員が納得していること」などを回答しました。

その後、特別代理人である司法書士を交えて遺産分割協議をおこない、最終的に夫の財産はすべて私が相続することになり、手続きを終えることができました。

息子の将来のためにも、しっかりお金を管理していきたいと思っています。

担当した専門家が解説!
「ここがポイント」

相続人に未成年者がいる場合は、原則として親権者が代理人となり遺産分割協議を行います。

しかし、本事例のように親権者も相続人である場合は利益相反行為となり、未成年者の代理人にはなれません。未成年者がいる遺産分割協議において親権者の代理を認めてしまうと、未成年者に不利な協議内容を押し付け、親権者自身を有利にできてしまうためです。

このような場合、未成年者が成人するまで遺産分割協議を保留するか、本事例のように特別代理人選任の申立をし、未成年者の代理で遺産分割協議に参加してもらうしかありません。遺産分割協議の保留を選択する場合、未成年の相続人が成人し、遺産分割協議を終えないと相続財産を自由に動かせないというデメリットがあるため、早急に現金が必要な場合などは、特別代理人の選任が必須です。

なお、特別代理人の候補者については、対象の遺産分割協議に利害関係のない方であればよく、特別な資格等も不要です。未成年者と親族関係がある方を特別代理人として推薦する必要もなく、第三者を候補者とすることも可能ですが、未成年者との関係性などにつき裁判所から問い合わせが入ります。

ただし、未成年者が 法定相続分 以下の取得となる協議内容(本事例のように遺産は全て母親にするなど)を希望する場合、特別代理人の選任が認められない場合があります。なぜなら、法定相続分以下の取得になることは、未成年者の損失につながる恐れがあるためです。

本事例では、未成年者が実家を離れるため親権者の目が届かなくなること、将来的に大学受験の費用捻出のため現金の管理が必要になること、といった点が裁判所に加味され、特別代理人の選任が認められています。

解説者プロフィール

髙橋 健一

司法書士ケン総合事務所

代表司法書士

髙橋 健一

1974年生まれ。2001年司法書士試験合格、2003年司法書士登録、司法書士法人の共同経営を経て、2012年司法書士ケン総合事務所を開設。各士業(弁護士や税理士等)との豊富なネットワークを活かし、お客様一人一人にあった質の高いサービスを提供している。 近年、遺言書作成や成年後見、民事信託といった生前対策分野のご相談が増えてきたことに伴い、更にサービスの向上を図るべく、また社会問題となっている超高齢化社会への貢献活動の一環として一般社団法人日本生前対策支援協会を設立。


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