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相続した家の火災保険の必要性

2022/11/2

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実家を相続した人のなかには、実家に掛かる火災保険の名義変更をするために保険会社に連絡した際、空き家の場合は対象外だと引き受けを拒否された経験をした人もいるのではないでしょうか。空き家は居住中の住宅よりも火災のリスクが高いため、加入できる火災保険が限られます。

今回は、そうした空き家に起きうるリスクを解説するとともに、万が一、火災などが発生した際に対応できるよう、火災保険への加入の必要性や、火災保険に加入する際の注意点について解説します。今後、相続によって実家などを受け継ぐ可能性のある人や、実家を空き家として持ち続けたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。

相続した空き家に火災保険は必要?

空き家の場合、火災保険に加入すべきかどうか、悩む人もいるかもしれません。しかし、空き家であっても、火災保険は必要です。その理由は、年々増加傾向にある空き家問題や、空き家に起きうるリスクが背景にあります。

空き家率は年々上昇傾向

総務省統計局が発表している「平成30年住宅・土地統計調査 特別集計」によると、平成30年の全国の空き家数は848万9千戸と過去最多となっており、全国の住宅の13.6%を占めています。空き家は、少子高齢化や人口移動の変化などによって増加の一途を辿っており、そのなかで管理の行き届いていない空き家が、防災・衛生・景観などの面で周囲の人々の生活環境に影響を及ぼすといった社会問題に発展しているのです。

相続した家が空き家になった場合のリスク

人の気配のない空き家には、以下のようなリスクが発生する可能性があります。

  • 崩壊や外壁の落下のほか、放火される恐れがある
  • 犯罪に利用される可能性がある
  • ゴミの不法投棄を発生させる原因となり、衛生環境が悪くなる
  • 衛生環境が悪くなることにより、蚊やハエが発生するほか、ネズミや野良猫が空き家に集中する
  • 外壁への落書きや、空き家の敷地内へのゴミの散乱などにより、景観が悪化する
  • 庭木が隣家や道路にまで伸び、近隣に迷惑をかける

相続した実家などが空き家になった場合、上記のようなリスクが発生します。万が一、火災が起きてしまった場合、火災が発生した建物の解体費用は通常の建物よりも人件費、廃棄物処分費、必要諸経費が多くかかるため、高額になります。火災保険に加入しておけば、このような費用負担が発生した場合も安心です。誰も住んでいない空き家だからこそ、火災保険に加入しておいたほうがよいと言えるでしょう。

火災保険を掛ける際の注意点

火災保険の加入を検討する際、以下のような注意点があることを知っておくことが大切です。

保険料が割高になる傾向

火災保険は、建物の用途や種別によって、引き受ける対象が以下の三つに分けられます。

専用住宅物件現在居住用として使用している住宅
併用住宅物件住宅と店舗もしくは事務所が併設されている住宅
一般物件事業用の物件(空き家は一般物件とみなされる)

火災保険料は、専用住宅物件<併用住宅物件<一般物件の順に高くなる傾向があります。空き家は、基本的に一般物件として引き受けられることが多いため、専用住宅物件よりも保険料が割高になる可能性があります。ただし、損害保険会社によって、空き家の現状や今後の状況等で引き受けられる条件が異なるため、詳細については必ず問い合わせるようにしましょう。また、一般物件の場合は、地震保険に加入できない点にも注意が必要です。

親が加入していた火災保険に継続加入はできない

親が加入していた火災保険への継続加入は、できない可能性があります。親が所有および居住し、火災保険に加入していた家を、相続により子どもが譲り受けた場合について、以下の二つのケースで比較してみましょう。

ケース1:子どもが相続した家にそのまま住む場合
→火災保険に継続加入できる(名義変更の連絡は必要)

ケース2:子どもが相続した家に住まず、空き家になる場合
→基本的に、火災保険の継続加入はできない

ケース2であっても、場合によっては継続加入可能というケースもあります。ただし、保険会社によってその基準は異なるため、加入していた損害保険会社に詳細を確認することをおすすめします。

なお、火災保険の契約者(親)が亡くなったことを伝えず、被相続人(親)の名義のまま保険に加入し続けた場合や、空き家であることを告知しなかった場合には、保険金が支払われないこともあるため注意しましょう。

管理を怠ると保険金を受け取れない?

火災保険に加入できたとしても、空き家の管理を怠ると、火災が起きてしまった場合でも保険金が支払われなくなる可能性があります。火災保険に加入できたことで安心し、空き家の管理を怠ることがないようにしましょう。

見積もりをとる際のポイント

実際に、火災保険に加入するとなった場合、まずは複数社に見積りをとって比較検討するようにしましょう。

火災保険の保険料は、「補償範囲」「保険期間」「補償金額(支払われる保険金の上限額)」の三つの要素で決まります。そのため、「不要なオプションや保険は外す」ことや、「保険期間を長く取る」こと、さらには「補償金額を低く設定する」ことなどが、保険料を低く抑えるためのポイントです。保険料が高いなと感じた際には、このようなポイントを確認してみましょう。

まとめ

空き家は人の目が届きにくいため、空き家特有の理由によって火災が発生してしまうことがあります。火災が起きた場合の建物の解体費は、通常の建物の解体費に比べて高額です。そのため、空き家であっても火災保険への加入は必要といえるでしょう。ただし、空き家の場合、加入できる保険が限られます。

加入に際し、必要な補償、オプション等を把握し、引き受け条件や保険料を検討するためにも、複数の保険会社に見積もりをとって相談してみるとよいでしょう。また、すでに火災保険に加入している場合も、空き家が対象であるか確認が必要です。

空き家を今後どのようにしていくかも考えながら、火災保険への加入手続きを忘れないようにしましょう。

監修

監修

 

北斗ソリューションズ株式会社

空き家・空地問題や地域活性化など、不動産にまつわる課題の解決のため、不動産事業の中で蓄積した経験と能力を活かし、調査・分析からソリューション開発までをおこないます。