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行方不明の相続人がいる場合の対応

2023/2/27

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遺産分割協議は相続人全員の同意が必要で、1人でも欠けると成立しません。このため、行方不明の相続人がいる場合、その人を除いて遺産分割協議をおこなうことはできず、対応が必要となります。

不在者財産管理人選任の申立て

行方不明の相続人が生存している可能性が高く、行方不明になってから7年未満である場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申立てます。ここでいう「行方不明」とは、単に「住所も電話番号もわからない」というだけでは不十分です。「戸籍の附票(住民票上の住所の変遷が記載されている)で確認した住民票上の現住所に住んでいないことが判明し、転居先の手掛かりも全くない」というようなケースが該当します。

不在者財産管理人が選任されたら、家庭裁判所に権限外行為の許可(※)を得た上で、行方不明の相続人の代わりに 遺産分割協議 に参加してもらい、遺産分割協議を成立させます。一連の手続きには、通常、数ヶ月を要します

※不在者財産管理人の役割は不在者の財産の管理・保存です。遺産分割協議に参加し、遺産分割協議を成立させる行為は、権限外行為となるため、家庭裁判所に権限外行為許可の申立てをおこなう必要があります。

なお、不在者財産管理人選任の申立てにあたっては、利害関係のない人を候補者とすることができ、家庭裁判所が認めれば、候補者が不在者財産管理人に選任されます。候補者がいない場合は、家庭裁判所が、弁護士、司法書士等の専門家を選任することになります。

【留意点】

  • 弁護士、司法書士等の専門家が不在者財産管理人に選任された場合、報酬や事務経費等は、不在者の財産から支払うことになりますが、支払いきれないと家庭裁判所が判断した場合、これを補う予納金を家庭裁判所に納付する必要があります。予納金の目安は20万円~100万円程度で、申立人の負担となります。
  • 不在者財産管理人は、不在者の利益を保護する必要があります。遺産分割における行方不明の相続人の取得分は、法定相続分以上を確保する必要があります。
  • 不在者財産管理人の業務は、遺産分割協議が成立すれば終了というわけではなく、「不在者が見つかる」「不在者の死亡が確認される」「不在者の失踪宣告がなされる」「不在者の財産がなくなる」といった終了事由が発生するまで継続します。弁護士、司法書士等の専門家が選任された場合、報酬の支払いが継続することになります。

失踪宣告の申立て

生死が7年以上不明である場合、行方不明の相続人の住所地または居所地の家庭裁判所に失踪宣告の申立てをおこなうことができます(普通失踪)。なお、戦争や船の沈没事故、震災等に遭遇した場合は、その危難が去ってから1年を経過しても生死不明である場合、失踪宣告の申立てをおこなうことが可能です(特別失踪)。

行方不明の相続人が失踪宣告を受けた場合、法律上、「死亡したもの」とみなされ、相続人から除外されることになります。当該相続人に子供がいる場合は、 代襲相続人 として、遺産分割協議に参加できるようになります。

失踪宣告の申立てがなされた後、家庭裁判所による調査、公示催告等の手続きを経て、最終的に失踪宣告の審判が確定するまでには、1年程度の期間を要することもあります。

【留意点】

失踪宣告がなされた行方不明の相続人が見つかった場合、失踪宣告の取消の申立てが家庭裁判所に認められると、その人の法律上の権利は復活します。行方不明の相続人を死亡したものとみなして遺産分割協議を行い、取得した相続財産については、その利益が残っている限度(現存利益)においてのみ、返還義務が生じます。仮にその相続財産をギャンブルで使い果たしてしまった場合、返還の必要はありません。しかし、生活費として使った場合は、自分本来の財産を使わずに済んだ分が現存利益となり、返還が必要です。

行方不明の推定相続人がいる場合の対策

行方不明の相続人がいる場合の手続きがいかに大変か、おわかりいただけたと思います。どちらの申立ても、手続きの完了や確定までかなりの時間がかかるため、 相続税 の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割協議がまとまらない可能性もあります。

この場合、未分割のまま、相続税の申告・納税をおこなうことになりますが、「配偶者の税額軽減の特例」「小規模宅地等の評価減の特例」といった相続税額を小さくできる特例を使うことができないため、納税額が大きくなってしまうこともあります(遺産分割協議成立後、特例を活用して申告をやり直し、差額の還付を受けることは可能です)。

行方不明の推定相続人がいることがわかっている場合、相続発生後に遺産分割協議をしなくても済むように、被相続人が元気なうちに遺言を作成しておいてもらうことをおすすめします。

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一般社団法人シニアライフよろず相談室

一般社団法人シニアライフよろず相談室は、信頼できる提携の専門家・企業とのネットワークを活かし、相続・終活など、シニアのさまざまなお悩みをワンストップで解決できる相談窓口を運営しています。毎週金曜日、夕刊フジにコラム「シニアライフよろず相談室」を連載中。