遺言書の有無の確認方法
2023/4/24
相続手続きの第一歩は、遺言書の有無の確認です。しかし、被相続人から『遺言書を作成した』と聞いていたのに、どこにあるのか手がかりが見当たらない、という場合もあります。今回は、そんな場合の対処方法について、ご説明します。
もくじ
公正証書遺言で遺されている場合
公正証書遺言 の場合、「遺言検索システム」が活用できます。1989年以降に作成された公正証書遺言は、日本公証人連合会によりデータベース化されています。
相続発生後、
①「相続人」「受遺者」「遺言執行者」
②上記①の代理人
のいずれかであれば、全国の公証役場で検索可能です(システムの利用は無料ですが事前予約が必要です)。検索の結果、作成年月日、遺言者の氏名、作成した公証人の氏名、作成した公証役場などが確認できます。
遺言書 の内容を確認したい場合は、遺言書が作成された公証役場に対し、原本の閲覧や謄本(原本の写し)の交付請求をおこなう必要があります。
自筆証書遺言が法務局で保管されている可能性がある場合
「遺言書保管事実証明書」の交付請求で保管事実を確認
遺言者が自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日開始)を利用した可能性がある場合、遺言書保管事実証明書の交付請求をおこなうことにより、法務局(遺言保管所)に遺言書が保管されているかどうかを調べることが可能です。交付請求は、誰でもおこなうことができますし、全国どこの法務局の窓口でも手続き可能で、郵送で請求することもできます。
なお、遺言の内容を確認したい場合は、法務局(遺言保管所)に閲覧請求をする必要があります。モニターでの遺言書の画像などの閲覧は、全国どこの法務局でも可能です。遺言書原本の閲覧は、遺言書原本が保管されている法務局でおこなう必要があります。
閲覧により遺言書の内容の確認はできますが、金融機関などに対する相続手続きを進める上では、「遺言書情報証明書」を取得する必要があります。遺言書情報証明書の交付請求は、全国どこの法務局に対しても可能で、郵送による交付請求も可能です。
この証明書には、遺言書の画像情報が全て印刷されているため、これを使って相続手続きを進めることができます。法務局が保管していた 自筆証書遺言 の場合、改ざん等の恐れがないため、家庭裁判所での検認(相続人全員に遺言の存在を知らせ、その内容を確認する手続き)は不要です。
法務局が相続人等におこなう通知で遺言書の存在を認識
自筆証書遺言書保管制度では、2種類の通知が用意されています。この仕組みを通じて、遺言書の存在を知る場合もあります。
一つ目は、「関係遺言書保管通知」。この通知は、法務局に保管されている遺言書について、相続人等の誰かが
①閲覧をおこなったとき
②遺言書情報証明書の交付を受けたとき
に、その他の全ての相続人等に対して、遺言書が保管されている旨の通知をおこなうものです。
二つ目は、「指定者通知」。この通知は、あらかじめ遺言者が指定していた相続人等の1名に対し、遺言書が保管されている旨の通知をおこなうものです。通知を受けた1名が遺言書の閲覧等をおこなうことにより、関係遺言保管通知がおこなわれ、結果として、全ての相続人等が遺言書の存在を知ることになります。
公正証書遺言でなく、自筆証書遺言書保管制度の利用もなかった場合
公正証書遺言の「遺言検索システム」でも確認できず、自筆証書遺言書保管制度の利用もなかった場合、被相続人が保管していそうな場所を徹底的に捜索するしかありません。捜索の結果、遺言書を見つけた場合は、家庭裁判所での検認が必要です。勝手に開封すると5万円以下の過料が課せられることもありますので、注意しましょう。
遺産分割協議終了後に遺言書が発見されたら?
遺産分割協議 終了後に遺言書が発見された場合、原則として、遺言の内容が優先されます。しかし、いったん終わった遺産分割をもう一度やり直すのは、大変なことです。相続人全員が遺言書の存在と内容を認識した上で、既に終わった遺産分割協議の内容のままでいいと合意した場合は、遺産分割協議の内容を優先することができます(遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者の同意も必要)。
ただし、 法定相続人 以外への 遺贈 を含む遺言の場合、受遺者による遺贈の放棄がない限り、遺産分割のやり直しが必要です。また、遺言によって「認知」された相続人がいる場合や「廃除」された相続人がいる場合についても、遺産分割のやり直しが必要です。
執筆
一般社団法人シニアライフよろず相談室
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