不動産の相続|4種類の分割方法
2022/10/7
身内が亡くなると、残された遺産を相続することになります。遺産にはさまざまなものがありますが、相続人が複数人いた場合にどのように分けるか難しいのが不動産の相続です。
預貯金や現金であれば分割しやすく問題は起こりにくいですが、不動産は簡単に分割できないケースが多くあります。ここでは、遺産分割における不動産の分け方について解説します。
もくじ
不動産の相続が揉めごとになりやすい理由
希望する割合で総額を割り算するだけで簡単に分割できる現金や預貯金と違って、土地や建物といった不動産は物理的に分割することができません。
しかし、相続おいては、相続財産総額のほとんどを不動産が占め、その他の財産は不動産に比べると少額というケースが多くあり、その場合、相続人の誰か1人が不動産を相続すると、残りの相続人が不動産と同等の現金を相続することは難しい状況になってしまいます。
こういったことから、本来は資産である不動産が、相続においては揉める理由となる“負動産”などと言われることもあります。
不動産をどのように分割すると揉め事が起こらず円満に相続できるのか、ここでは相続財産の分割方法について見ていきましょう。
現物分割
現物分割 とは、残された財産をそのままの形で分割することです。
例えば、自宅は配偶者、証券は長女、預貯金は長男というように相続する場合などです。誰がどの財産を相続するかを決める方法としては、もっともシンプルでその後の手続きも簡単になります。
ただ、相続財産が例えば親の自宅のみの場合、誰かがその自宅を相続すると、他の相続人は相続するものがなくなってしまいます。また、不動産と預貯金をそれぞれ誰かが相続する場合には、資産価値に隔たりが発生する場合もあります。
このように現物分割という方法は、分割する手続きは楽になりますが、すべての相続人がその分割内容に納得できるかは、相続人同士の話し合いによると言えます。価値が同等の相続財産が複数あって、相続人それぞれに行き渡るような場合は現物分割が適しているでしょう。
代償分割
代償分割 とは、複数の相続人の中で特定の相続人が分割しにくい遺産を相続する代わりに、他の相続人たちに代償金を渡す方法です。
例えば、相続財産が2,000万円相当の親の自宅のみで相続人が子ども2人という場合に、自宅を相続した方が、もう1人に1,000万円の代償金を支払うことで、結果として遺産を均等に分けたことになります。
代償分割は、現物分割に比べて相続人間の不平等が生まれないため不動産の相続がしやすいと言えます。ただし、相続人がどちらも不動産ではなく現金で相続したいとなった場合には、そもそも代償分割という方法は難しいでしょう。
また、代償金を支払う相続人はまとまった現金を渡すことになるため、相応の経済力が必要になるという点も押さえておきましょう。
代償分割は、被相続人の自宅を相続人の誰かが相続して住み続ける場合や、農業や事業を引き継ぐ相続人が農地や事業用不動産を引き継ぐ場合、会社の経営を引き継ぐ相続人がその会社の株式を引き継ぐ場合などに利用されるケースが多いです。
換価分割
換価分割 とは、不動産、証券、宝石など現金に替えることができる遺産を売却し、現金にしてから分ける方法です。
例えば、2,000万円相当の不動産が相続財産としてあり、子ども2人が相続人の場合には、不動産を売却し、現金に換えて、均等に受け取ることができます。
実際に不動産などを売却する際にはさまざまな諸経費がかかりますから、諸経費は控除した上で、残った現金を相続人間で分割します。
《諸経費が500万円だった場合》
現金に換えて公平に分けることができるため、現物を物理的に分割することが難しい不動産の相続においては、「争続」回避の有効な手段となります。相続した不動産を相続人全員が使用する見込みがない場合や、現物分割・代償分割ができない場合には最適な方法です。
共有分割
共有分割 とは、例えば一つの不動産を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。名義人がそれぞれ所有する割合を持分割合と言います。
例えば、相続財産に実家があり、子ども2人が相続人の場合、それぞれの持分割合を2分の1ずつとして共有名義にして相続することになります。
相続人の相続割合に応じて公平に不動産を保有することになるため、相続時に揉めることはほとんどありませんが、後々問題が起こることが多いのが共有分割の特徴です。
仮に共有名義人のうちの誰かがお金に困り、自分の持分を売却したいとなっても、売却する際には名義人全員の同意が必要になるため、名義人のうち誰かが反対すると売却することができません。また、共有名義の不動産が広大な土地でもない限り、そもそも第三者が共有不動産の一部の持分を購入しても活用が難しいため、買い手がつかないことも考えられます。
さらには、共有名義人の1人が亡くなった場合、その人の持分を相続財産として家族が相続することになります。結果として共有者が増えていくため、意見の相違などにて売れない、登記変更もままならないなど、身動きがとれなくなるリスクも考えられます。
まとめ
遺産分割の方法には、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」という4つがあり、それぞれどのような状況に適しているかを見てきました。
遺言書 もなく、相続財産が親の自宅のみなどの場合は相続トラブルになりがちですが、4つの方法を理解した上で、相続人同士で話をして最適な方法を見つけましょう。
監修
司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト
松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。