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相続人として認められないケース|欠格事由と廃除

2022/12/1

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民法では相続人になれる人を法定相続人として定めており、配偶者と血族の中から優先順位に従って遺産の相続権を得ることができます。

しかし、たとえ法定相続人であっても相続人の権利が認められないケースがあることをご存知でしょうか。この記事では、相続人として認められない代表的な例として、欠格事由と廃除について解説していきます。

欠格事由とは?

民法で定められた 法定相続人 であっても、相続人側に法を犯す、または不正をはたらくような好ましくない行為が認められた場合、法律上の相続権を剥奪する制裁措置がとられることがあります。これを「欠格事由」といいます。では、どのようなことが欠格事由になるのでしょうか。

  • 遺産目当てに被相続人を死亡させたり、死亡させようとしたために刑罰を受けた
  • 相続が有利になるように他の相続人を死亡させたり、死亡させようとしたために刑罰を受けた
    ※故意ではない過失致死罪などは除く
  • 被相続人が殺害されたことを知っていながら、告発・告訴しなかった
    ※子どもなど分別がつかない相続人や犯人が自分の配偶者・直系血族などの場合は除く
  • 詐欺(だまし)や強迫(無理強い)によって、被相続人による遺言書の作成・撤回・取消・変更の妨害や操作をした
  • 遺言書の内容を偽造、変造、破棄、または隠匿した者

上記に示したような事実があれば、法定相続人でも欠格者として強制的に相続権を失います。その他相続人が、裁判所への申し立てなどの手続きをおこなう必要も特にありません。

欠格事由の補足事項

遺留分の権利も失う

欠格者は、 遺留分 の権利も失います。遺留分とは、法定相続人に最低限保証される遺産の取得割合です。

相続人にとって不利益な遺言の内容であっても一定の割合で遺産を取得することができる権利ですが、欠格事由によってそもそもの相続権を失っているため、遺留分の権利もなくなります。

相続発生後でも欠格事由になる

相続発生後(被相続人の死亡後)に欠格事由が発生した場合、相続発生時に認められていた相続権も全て失うことになります。

また、遺産分割後に欠格事由が発生した場合は、他の相続人は遺産を取り戻すために欠格者へ請求をすることができます。

代襲相続は認められる

欠格者は相続権を適用する際に法律上死亡と同じ扱いになるため、欠格者に子どもがいれば 代襲相続 することができます。

例えば、父親が亡くなり、母親と子どもAが法定相続人になるはずが、子どもAは欠格事由に該当し相続権を失っているケースでは、子どもAの子(被相続人にとっての孫)がいれば、母親と孫が相続人となります。

廃除とは?

廃除 とは、亡くなった本人(被相続人)の請求により、家庭裁判所が遺留分を有する特定の推定相続人の相続権をはく奪することです。

廃除の請求は、被相続人が生前におこなうケースと、 遺言書 に記載することによっておこなうケースがあります。ただし、廃除の請求をするには、主に以下のような廃除事由が必要です。

  • 推定相続人が被相続人に対して虐待をした
  • 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えた
  • 推定相続人に著しい非行があった
    ※推定相続人とは、相続発生時に相続人に該当する人のこと

例えば、被相続人に暴力を振るったり、わざと介護をしないで放置したりするなどの虐待行為や、働かずにギャンブルばかりして借金を抱えるなどの非行行為が該当します。

ただし、廃除請求をしたとしても家庭裁判所に認められないこともあります。2017年の司法統計によると、廃除の請求が認められたのは20%程度です。認められない多くの案件は「長男が就職して都会に出ていったきり、全然帰省しない」「次男とは会話がなく何を考えているかわからないから長男だけに遺産を渡したい」など、感情面の訴えが多いようです。

また、廃除ができるのは配偶者と第1順位(子。子が死亡しているときはその子である孫)と第2順位(親)の推定相続人に限られ、第3順位である兄弟姉妹などは廃除をすることができません。

つまり、遺留分が認められている推定相続人だけが、廃除の対象です。遺留分のない推定相続人であれば、遺言書で遺産配分しないことで廃除と同様の対応ができるからです。

廃除になった人は、欠格者の場合と同様に、遺留分の権利も失いますが、廃除になった人の子が相続する代襲相続は認められます。

廃除は取り消しも可能

いったん廃除の請求が認められた場合でも、被相続人が存命中に廃除事由の行為が改善されたと判断し、家庭裁判所に廃除取消の申し立てをおこない認められると、廃除を取り消ししてもらうことができます。

廃除に至る場合は家族関係のこじれが発端となっていますから、廃除された推定相続人が行動をあらため被相続人に誠意を伝えることで、関係が修復され、廃除の取り消しにつながる可能性もあります。

まとめ

このように、相続においては「配偶者だから」「子どもだから」といって必ずしも相続人になれるわけではありません。しかし、欠格・廃除の事由を見ればわかるように、普段から道徳的なおこないをしている人であれば、欠格事由や廃除にあてはまってしまう心配をする必要はないでしょう。

相続の障害になるようなトラブルは起こさず、平穏に相続をおこなうことができるよう心がけておきましょう。

監修

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司法書士法人松野下事務所/
一般社団法人エム・クリエイト

松野下グループは、超高齢社会の様々な不安、困り事を登記部門として「司法書士」が、資産コンサルティング部門としてシニア層に特化した「ファイナンシャルプランナー」が、各専門家と連携して、より高度で充実したコンサルティングをおこなっております。